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Romanian Soccer Today 2011.6
6月30日 イングランド

  タマシュにラツィオからオファー

 昨シーズン、昇格チームを支えて余りある活躍でルーマニア代表でも復調したガブリエル・タマシュは、冬のチェルシーへの移籍の噂に続き、現在のところ噂されているセリエAのラツィオ入団の可能性に心躍っている模様。

  ラツィオのクラウディオ・ロティート会長によるとプレミアリーグのウエスト・ブロムウィッチ・アルビオン所属のタマシュに対して45万ポンドでの1年レンタルを打診しているようです。もちろん買取オプション付き。ラツィオは所属している左サイドバックのシュテファン・ラドゥの活躍によりルーマニア代表選手に注目しているようで、センターバックであるタマシュの他にも右サイドのクリスティアン・サプナルをFCポルトから、GKのチプリアン・タタルシャヌをステアウアから狙っていると報じられています。

 『私の夢はラツィオでプレーすることです。まだ交渉段階だから多くのことは言えませんが、すべてがうまく進むことを願っています。楽しみに代理人からの吉報を待つことにします。』

 移籍交渉がボツになるなんてことは多くあるこの世界で、まだ決定してないのにこのような発言をして大丈夫なのでしょうか。一転して残留とかなったら心あらずのチームに居場所があるのかが心配です。ましてや自身はかつてオセールでセルティック移籍濃厚から残留になり、すでに構想から漏れた経緯がありますので。
6月24日 イタリア

  ムトゥのチェゼーナ移籍が正式決定

 イタリア・セリエAのチェゼーナは23日、クラブの公式ウェブサイト上で、フィオレンティーナからルーマニア代表アドリアン・ムトゥを獲得したことを正式発表しました。契約期間は2年間で、1年の延長オプションがつけられている模様。チェゼーナによれば、本人の「オファーを受ける意欲」が決め手になったという。

 フィオレンティーナでは5シーズン在籍して112試合出場54得点を記録したムトゥ。しかし2度のリーグ4位が最高位でクラブをチャンピオンズリーグ本戦に連れて行くことはかなわず。また出場すれば活躍する反面、2度目のドーピングで長期出場停止や飲酒、暴力、練習ボイコットなどでチームにとっては諸刃の剣でありました。近年は世代交代の流れやムトゥ不在時にもある程度の成績を維持できるチーム構成ができてきたため、常に移籍が噂されていました。1月にもチェゼーナ移籍に迫ったムトゥは、クラブに残留したものの、最終的にチェゼーナへ加入することが決まったようです。チェゼーナのイゴール・カンペデッリ会長は、次のようにムトゥ獲得を喜んでいます。

 『我々は何カ月も前から、アドリアンがチェゼーナのユニフォームを着られるようにと動いていた。彼がプロジェクトの一員になることを受け入れてくれたのは、私にとって誇らしいことだ。選手がチーム、スタッフ、街に完璧に溶け込むことを確信している。』

 一方、ムトゥ本人もこのようなコメントを残し、チェゼーナ移籍への満足感を表しています。

 『この新たな冒険に飛び込むのが楽しみだよ。チェゼーナのような野心的なプロジェクトの中心に据えてくれたことに対し、カンペデッリ会長に感謝している。僕は減俸を受け入れてまでオファーを受けた。自分が求めていた熱意を与えてくれると確信している。』

 その上で、ムトゥは古巣となったフィオレンティーナに対し、『感謝したい。特にオーナーのデッラ・ヴァッレ一族には、一緒に素晴らしい年月を過ごさせてくれたことを感謝している。この素晴らしい経験をずっと忘れないよ。』と感謝の言葉をつづっています。
6月14日 ブカレスト

  ピツルカが3度目の代表監督へ

 未曾有の暴風の悪夢がラズヴァンの辞任により終わりを告げ、焦点となっていた新しい代表監督には噂されていたハジでもなく、ボローニでもなく、長きの低迷から強豪チームを構築して2008年の栄光をつかんだヴィクトル・ピツルカが就任することになりました。付け加えておくと2008年の栄光から次の予選にて大ブーイングを巻き起こすほどの凋落で一転して嫌われ者になったピツルカに決定です。

 ハジ引退以降は2002年、2004年、2006年と3大会連続で大舞台を逃していた代表を規律のもとに建て直し、召集選考にも問題こそ引き起こしたが、周囲の圧力に結果で黙らせてついには目標であった予選を突破。しかも早くから2008年が最終目標と掲げていたように、常に1試合ごとに熟成の名のとおりに成長を見せて、なんとなくのラッキーな突破ではなく、オランダを撃破してのグループ1位でした。しかしながら本大会では粘ったものの、このチームではあれ以上は無理という限界も露呈し、迎えた2010年予選では選手の燃え尽き症候群ばりの低調なプレーで順位を伸ばせず、そしてメディアへの強硬な態度も結果という黙らせるに値する武器がなくなったため、一気に超悪人として解任の道筋が整っていきました。

 この監督の短所はあまりに厳しすぎる規律とメディアへの挑戦的な態度、そして召集において縁故とまではいかないまでも好き嫌いが激しいというところです。代表監督という絶対的権力を重んじて、反旗を掲げるものには制裁をするのも特徴。それまでのぬるま湯からの脱却では必要な部分でもありましたが、基準はあいまいです。おそらくは絶対服従の謝罪で自身が上に立った時点で解消はされますが(ラドイ、コントラ、ムトゥなど経験済み)、さほど大きな問題を起こしていない選手ですら服従を見せないと永久追放です。

 ギオアネに関しては稀代の才能ながらヨルダネスクとの決別で代表でプレーしていなかったのを迎え入れて、大重体などで離脱して2008年予選のメンバーには無理でしたが、良き相談相手として良好な関係にあったのを一転して2010年予選からは構想外としました。いまだ公にはなっていませんがおそらくは私的な交流の部分で嫌悪を感じたところがあるのでしょう。ラズヴァンになってギオアネも召集に答えたことから推測されます。ただし前例としてヨルダネスクという代表監督に反旗を翻すプライドの高さを持つギオアネに否があったとも思いますが。ギオアネが謝らなかっただろうことからの構想外だと思われますが、もともと謝るべき事象があったとすればそれは代表監督が怒るようなことではないちっぽけなものだと思われます。

 ラドゥに関しては元々は熟成メンバーに新参者を加入させるのを控えていたピツルカですら、育てていく意向で召集やテストで起用していましたが、2008年大会後には伝えられるところによるとセリエでプレーしていることで態度がでかくなったから外したとの事。どのレベルの態度の大きさかはわかりませんが、代表監督として器の小ささが見れた部分でした。推測なので代表選手としてのあるべき態度でなかったかもしれませんし、代表の規律を守るべき大事な追放だったのかもしれません。そこで思うのはそのラドゥの態度というのは、大事な代表の試合に仮病を使ったラドイ、世界的にも論外な問題をおこしているムトゥより大きなものなのでしょうか?後者の二人は許されているどころか、長期的視野を反故にしてまでいまだ必要なベテランとして構想内です。ただ単に癇に障る部分があり、それに対して謝っていないからという理由が見えてきます。ギオアネ同様に。

 セリエで活躍するラドゥ、中東に行ってレベルの落ちたラドイ、代表監督として戦力としてみていただきたい。個人の好き嫌いをまた持ち出してくることは勘弁して欲しい。現在のギオアネや、年齢的なものでのスンマルテアンは落としてもやむなしの範疇ではありますが、十分な能力があり、ラズヴァン終盤に代表への協力の態度を見せたラドゥと守備的MFにスタメンをはれるだけの新戦力を見つけられなかった場合のムレシャンは柔軟に、大人として、そして「代表を強くするための重要なファクター」として自身の権限を振るって欲しい。

 いちおう契約期間は4年間で。前回同様に十分な建て直しの期間が設けられています。可能性を追って今回の残された2012年、2014年予選では十分戦える戦力に、最終目標は2016年ということでしょう。また振り出しに戻る長い期間のステップアップですが、少なくとも2014年予選では敗退でも終盤までもつれるようなスリリングな展開で楽しませて欲しいですね。長期スパンでのチーム構築では実績があるだけに、期待しすぎなくても5位というのはないでしょう。ただし論争を巻き起こしながらの道のりでしょうね。

 自身のさっそくのミッションとしてキヴとラドイの代表復帰を画策しているようですが、実現するかの予想はキヴ35%、ラドイ90%ぐらいでしょうね。ラズヴァン政権ではキャプテンとして文句は言わなかったキヴですが、監督として何の施策もない政権では毎試合ごとに疲弊していたことは明らかで、引退を決意したのも代表への労力と魅力がつりあわなくなったこととされてもいます。そこでかつて栄光へ導いたピツルカのその厳しいとされる規律はキャプテンとしてはストレスの防波堤及び同調するものとして分散するものであっただろうし、なにしろ戦術理論にも従う魅力は感じていると思われる。ただしネックは本当にケガがちであること、インテルに集中しないとポジションが危うくなっていること、引退撤回を恥とすることが挙げられます。あとは本当にラズヴァンでなければいいという理由だったら、解任濃厚のボスニア戦後まで引退の判断はしなかったでしょう。2014年ぐらいまではスタメンでできますが、世代交代のタイミングとして諦めましょう。ラドイは自分に都合が悪くなると引退を口にする子供みたいな感じなので、ルペスクの件が収束するか、ピツルカの強烈な説得ならば可能。代表でプレーしたい欲はまだまだあります。ただし・・・もう必要ないんじゃないかな。

 要は「ラズヴァンでなければ誰でもいい」という条件からすれば、今のところ「可」ですね。「良」にも「優」にもなる可能性は実力からして大きいですが、なにぶんタイミングが悪すぎます、。次の次ぐらいの監督としてピツルカが就任するのであれば、負のイメージの時間的みそぎも済んでいるでしょうが、結果的に破壊しつくしたラズヴァンですら就任時は大賛辞で迎えられたのはその前のピツルカ後期がひどすぎたからです。問題が解決されないままの消去法での元さやでしかないです。期待しすぎなければいいと思います。
6月11日 アスンシオン

  南米親善ツアー

パラグアイ戦

相手のスピードも目を張るものでしたが、若手の判断力の向上が責務とも思う。

ディフェンソーレ・デル・チャコ

パラグアイ 2 20 0 ルーマニア
00
ネルソン・ヴァルデス
ロケ・サンタクルス
2
29
フスト・ヴィジャール
ルイス・カルドーソ
パウロ・ダ・シルヴァ
イスマエル・ベネガス
ミゲル・サムディオ
エドガー・バレット
(76分 エルヴィス・マレコス)
クリスティアン・リヴェロス
ロベルト・アクーニャ
(9分 オスマル・モリナス)
オスヴァルド・マルティネス
(77分 ジュリアン・ベニテズ)
ネルソン・ヴァルデズ
(63分 パブロ・ゼバロス)
ロケ・サンタクルス
(46分 エルナン・ペレス)
GKGK
DFDF
DFDF
DFDF
MFMF
MFMF
MFMF
MFMF
MFMF
FWFW
FWFW
FWFW
FWFW
FWFW
FWFW
FWFW
コステル・パンティリモン
コルネル・ルパ
パウル・パップ
(46分 クリスティアン・オロス)
フローリン・ガルドシュ
ヤスミン・ラトフレヴィッチ
ガブリエル・ムレシャン
(61分 ダン・アレクサ)
ガブリエル・ジュルジュ
(46分 アレクサンドル・ボウルチェアヌ)
ガブリエル・トルジェ
(84分 リヴィウ・アンタル)
クリスティアン・タナーセ
(73分 ロメオ・スルドゥ)
ヤニス・ズィク
(46分 ルチアン・スンマルテアン)
マリウス・アレクセ
ジェラルド・マルティノ 監督 シュテファン・ヨヴァン
4-4-2フォーメーション 4-4-2フォーメーション
警告
61 ガブリエル・ムレシャン
ベンチ
ディエゴ・バレット
オルランド・ガオナ
フェデリコ・サンタンデール
/・ シルビウ・ルングJr
チプリアン・タタルシャヌ

プレイバック・オブ・ザ・ゲーム

 前回からの変更点と言えば主にマリカの離脱で、守備ラインはそのまま。攻撃陣はブラジル戦も安定した能力を見せたムレシャンとトルジェ以外は総替えとなった。どうせ全選手が出場するのだが、出場が予定されていたツクデアンは練習中のケガで失意のツアーとなった模様。

 パラグアイもブラジル同様にルーマニアのメンバーでは申し訳なくなるようなベストメンバー。ブラジルに比べてパラグアイは堅守からの速攻が持ち味のチームで、現在のルーマニア相手にそのスタイルを踏襲してくるかが見ものだったが、そのスピードは評判どおりの切れ味で序盤から早くも試合を決定付けることになった。

 試合開始2分、まだ自陣での緩やかなパス回しの状況で、左サイドのラトフレヴィッチからのパップへのパスが狙っていたヴァルテスの強襲によってインターセプトされて、難なくタタルシャヌもかわされて失点。格上相手に試合が安定する前の痛恨の失点だったが、時間の問題だけではないことも明らかになったのは続く4分。CKからのクロスがヘディングでの競り合いで左右に二転三転している間に、中央のGK正面の選手をフリーにしてしまい、そこにボールが渡る。ボレーこそミスで助かったが、残る時間に果たしてどれだけ得点されるのかと露呈する不安な若きDF陣。

 ここで早くもパラグアイが選手交代。異様な光景だったが、ブラジル戦同様にパラグアイも一人の選手の花道としてセッティングしていたことが判明。98年から3度のワールドカップを経験し、2007年に現役引退、2009年に復帰した39歳のロベルト・アクーニャが4年ぶりの代表を引退試合としてスタメンだったと気づいたのがこの時点。98年と言えば私が社会人1年目で、6月の給料からけっこう高額なS-VHSのビデオデッキをワールドカップ用として購入したのを覚えている。それほど熱を入れていたのでもちろん絶対的司令塔としてパラグアイをワールドカップに導いたアクーニャの存在も知っていた。ロナウド同様に時代の流れを感じる一幕だった。

 早々の失点を許したルーマニアだが、攻撃の方はどうかと言えば、とにかくコンビネーションの雑さが目立った。ボスニア戦でのベストメンバーでは素晴らしい流れを披露していたが、この日のメンバーの異なる両サイドのMFとDFのパス回しはゴール近くになると無駄な動きでいくつかのチャンスをフイにした。相手エリアまでいっても次のパスがチャンスを広げるパスではなく、対峙したDFのプレッシャーから逃げるべき消極的なパスで、堅守のパラグアイに簡単に読まれてカットされる。

 そうして28分、自軍での簡単なパス回しを奪われて、上がっていた右サイドのルパの裏スペースに流されたボールを楽にクロスでまとめられると、中央からパラグアイのサンタクルスにヘディングで決められて追加点を許した。

 前半終了まで堅いパラグアイのプレスに手も足も出ずだが、デッドボールの奪い合いでは意外にも互角。ただパラグアイの奪取後のファーストパスがカウンターに繋がる、スピードに乗ったものである一方、ルーマニアのファーストパスは正確性を欠いたもので、DFを背負った近くの選手への遅いパスか、スルーがボールだけむなしく転々と転がっていくものだった。

 後半最初から投入された選手は3人。特にボウルチェアヌはアンカーとして、スンマルテアンは攻撃のリズムとしてわずかながらルーマニアにもスピードが出てくる。47分にトルジェの右サイド突破から得たチャンスで中央のアレクセのミドルや、55分にトルジェが中央で得たFKからのラトフレヴィッチの惜しい弾丸シュートなど徐々にチャンスが増えてくる。

 もちろんパラグアイも相変わらずの堅守速攻だが、控えとの戦力差があるようで、威力は前半ほどではなし。しかし巻き返しの時間帯であったはずのルーマニアもトルジェがFKを枠外に逸らすなど得点には結びつかない。ここまでセットプレーでの枠内シュートは1本もない状況で、スペシャリストがいない欠点が痛いところ。

 試合終盤になると両チーム共にリスクを背負った攻撃重視システムへと移行。これによりラトフレヴィッチのオーバーラップからのトルジェのミドルや、スルドゥの1対1などさらに決定機にはさらに近づくことになったが、同じようにピンチも迎えていたシーソーゲームの展開はそもそもの実力差からはいたしかたないとするべきツアーだった気もする。

 総括してこの上がり目のフォーメーションだったからと言い訳したくないのがルパのポジション取りで、試合開始からずっと裏のスペースを突かれて容易にクロスを上げられていた。トルジェとのホットラインも十分でないのに、単独で上がり気味のタイミングは試合最大のウィークポイントで、今後さらなる修正が必要となるだろう。でなければ消えていくのみである。

2戦の苦渋をこれからの経験に生かせるか

 今回辞退した経験のある熟知メンバーだったら勝つことも十分に可能だとは思います。まぁこのツアーは本当に選手の経験になればいいなと。試合が組まれた時点でそれしか思っていませんので。ただしこの2戦が次のワールドカップ予選のポッド分けで第4ポッドに降格させるものと知っていたら、ツアーを強行軍で組んだ意味とは?もしやらなければギリギリ第3ポッドだったと思うと疑問が残る。

6月8日 サンパウロ

  南米親善ツアー

ブラジル戦

日本時間で朝だったので見てません。選手にとって新政権の糧になれれば良し。

エスタディオ・ドゥ・パカエンブ

ブラジル 1 10 0 ルーマニア
00
フレッジ 22
ヴィクトル
マイコン
ルッシオ
(71分 ルイゾン)
ダヴィド・ルイス
アンドレ・サントス
エリアス
ジャジソン
サンドロ
(60分 ルーカス・レイヴァ)
ロビーニョ
(67分 ルーカス・ロドリゲス)
フレッジ
(31分 ロナウド)
(46分 ニウマール)
ネイマール
(76分 チアゴ・ネーヴェス)
GKGK
DFDF
DFDF
DFDF
MFMF
MFMF
MFMF
MFMF
MFMF
FWFW
FWFW
FWFW
FWFW
FWFW
FWFW
FWFW
チプリアン・タタルシャヌ
(67分 コステル・パンティリモン)
コルネル・ルパ
パウル・パップ
フローリン・ガルドシュ
ヤスミン・ラトフレヴィッチ

ガブリエル・ムレシャン
(80分 ダン・アレクサ)
アレクサンドル・ボウルチェアヌ
(66分 ガブリエル・ジュルジュ)
ガブリエル・トルジェ
ルチアン・スンマルテアン
(53分 マリウス・アレクセ)
チプリアン・マリカ
(72分 ヤニス・ズィク)
ロメオ・スルドゥ
(46分 クリスティアン・タナーセ)
マノ・メネゼス 監督 シュテファン・ヨヴァン
4-4-2フォーメーション 4-4-2フォーメーション
警告
68 ガブリエル・ムレシャン
ベンチ
ジェフェルソン
エンリケ・パチェコ
レアンドロ・ダミオン
ファビオ・ロペス
アンデルソン
/・ シルビウ・ルングJr
クリスティアン・オロス
リヴィウ・アンタル
ジョルジェ・ツクデアン

プレイバック・オブ・ザ・ゲーム

 コパ・アメリカのための調整として、各国が練習相手を欲していることから、お約束となっている強行スケジュールでの南米巡りがスタート。今回は強豪ブラジルがベストメンバーということで期待された1戦だったが、大一番のボスニア戦を終えた海外組のムトゥ、ラツ、タマシュ、サプナルといった主力が帯同せず、またラズヴァンが去った後のリスタートとしての状況もあり、若手主体の何も決まっていない代表スタイルに真の意味で経験ツアーとなった。

 そんな状況に加えて既報どおり先ごろ現役から退いたスーパースター、ロナウドの引退記念試合とも位置づけられており、勝利うんぬんではないものとしてルーマニアの興味が薄いのに対して、ブラジルではお祭りムードの様相となった。

 もはや説明のいらない攻撃陣を誇るブラジルに対して、現実力のルーマニアは太刀打ちできるはずも無く、しかもこの日のDFラインはユース代表に毛が生えた程度と揶揄されてもおかしくないレベルで全員がこれからの選手である。ボール回しのスピードや個人技でのキープ力はこれまでの欧州予選でも経験したことの無いはずで、地に足をつけてとは真逆のピッチ上で踊らされるルーマニア代表がそこにあった。

 4分のボウルチェアヌのPKピンチは誤審によりエリア外のFKで逃れ、1分後のルッシオのボレーはタタルシャヌの好守で防いだ。12分のネイマールの突破からのシュートはわずかに枠を外れて助かったのもつかの間、マイコンからの決定的パスを受けたロビーニョのシュートも外側のサイドネットで生きた心地がしないルーマニア。

 ここまで無失点でしのいでいたが、前半21分に右サイドのネイマールから口火が切られると、素早いパス回しはエリア内中央→左サイドへと小気味よく繋がれて、GKタタルシャヌをはじめ4人のDFも釣られた結果、がら空きのゴール前でフリーになったフレッジに渡って難なく失点。

 その3分後には前半のルーマニア代表にとって唯一とも言えるチャンスが巡ってきた。ゴールから33メートルの距離のFKを得ると、このメンバーでは蹴る機会が多くなっているムレシャンがシュート一閃。惜しくもクロスバーに直撃して、劣勢の中での頼みの綱であるセットプレーのチャンスは実らなかった。

 そして31分になるとこの日の主役である、代表97試合62得点の記録を持ち、4度のワールドカップ出場で最多15得点、FIFA最優秀選手賞を3度、バロンドールを2度受賞の怪物ロナウドが不摂生で現役を縮めたデブッチョの体で登場。

 以後のブラジルはこの憧れの選手の餞別としてゴールのために次々とチャンスボールを送りまくる。要するに追加点の取れる可能性がはるかに高い他の選手へのチャンスの多くを捨てて、フェスのための盛り上げに終始した。この時点の余裕ですでにルーマニアでは相手にならないことが事実として晒された。

 結局のところ、このデブッチョへ訪れたチャンスは3度。36分と42分の決定機はタタルシャヌが責任をもって防ぎ、40分のチャンスはロナウドのミスで得点にはいたらなかった。ロナウドは前半終了と共に退き、ハーフタイムには盛大なセレモニーがおこなわれて、ブラジルの選手は言わずもがな、この日にラインナップされたルーマニア代表の若き選手たちも子供の頃にワールドカップで輝きを放っていたレジェンドに敬意を持って次々と握手。これだけでもこの試合の価値がある良き思い出になったことだろう。

 後半に入ってもブラジルの圧倒的な攻撃は止むことはなかったが、両チームともに次々と選手交代をおこなったことで、そのバランスの変更がルーマニアにも攻撃を仕掛ける余地を作り出した。53分から64分までのブラジルの猛攻は、この日の大活躍で敵チームからも大絶賛を受けたタタルシャヌ中心に守りきり、ルパと交錯したことで大事をとって退いた後もパンティリモンを軸に追加点を与えなかった。

 72分には負傷したマリカもベンチに下がったが、この日のバランサーとして役割をこなしていたムレシャンや変わらずの突破力で代表の希望のトルジェを中心に守りだけではないところも垣間見せた。87分の決定機であった24メートルのシュートはGKに阻まれたが、最後の締めのインパクトには十分なシーンだった。

デブッチョにはゴールを割らせん!

 マリカが『もう少しガンバれば引き分けられた試合でよくも無かったが、言うほど悪くもなかった。』と言っていたようですが、そもそもブラジルは調整試合であり、本気になればデブッチョなんぞ出さないし、パスも渡さない。この試合が組まれた時点で本気の様相ではないことを理解すべし。

6月7日 ブカレスト

  南米親善試合ツアー ブラジル戦・パラグアイ戦

代表メンバー変更

  
 ボスニア戦での快勝を受けて南米ツアーに出かける代表の一行ですが、やはり強行日程による無理難題や噂されていたようにラズヴァン監督が辞任したこともあり、試合の位置づけが微妙になっています。主力は公式戦でないことで拘束力もなく、多くが離脱。国内組の修行の場となりました。久々の強豪とのマッチのため格下であるルーマニアが国内選抜メンバーで臨むのは失礼かとも思いますが、ブラジルもコッパ・アメリカ直前の調整の意味合いが強く、また不摂生のかたまりとなり、さきほど現役を引退したデブッチョのロナウドが出場できてしまう引退記念試合というお祭りなのでお互い様のようです。

 まずはボスニア戦直前での変更ではゴイアンとスタンクがケガで離脱して代替はズィクとオロス。代表では活躍できないレッテルを貼られているズィクですが、国内リーグ得点王の実績で滑り込み。オロスはラズヴァンとの縁深いブラショフの選手でこれもまたラズヴァンと縁深いラピドへの移籍が決まっている選手です。代表を破壊しつくして自らの進退のピンチになっている中で、ラピドとの水面下での交渉が締結間近となった今、自らの希望でラピドに加入させて今回、代表の崇高な舞台すら私利私欲の場として簡単に用意したようです。

 またボスニア戦後に辞任したラズヴァンに代わり、サンドイ、ヨヴァン、アポロザンの裏方3人衆が臨時で指揮を執るようです。選手ではマリカを一人残しでムトゥ、ラツ、タマシュ、サプナルが帰ったため、ユースからツクデアンとマテイが引き上げられています。


 GK  所属 生年月日 CAP
 コステル・パンティリモン  FCティミショアラ 1987.02.01 (24歳) 11/0
 チプリアン・タタルシャヌ  ステアウア・ブカレスト 1986.02.09 (25歳) 4/0
 シルビウ・ルングJr  ウニベルシタテア・クライオバ 1989.06.04 (21歳) 1/0
 DF
 コルネル・ルパ  オツェルル・ガラツィ 1990.01.16 (21歳) 3/0
 フローリン・ガルドシュ  ステアウア・ブカレスト 1988.10.29 (22歳) 2/0
 パウル・パップ  ヴァスルイ 1989.11.11 (21歳) 2/0
 I・ラトフリエヴィッチ  ステアウア・ブカレスト 1986.05.11 (25歳) 0/0
 クリスティアン・オロス  FCブラショフ 1984.10.15 (26歳) 0/0
 ガブリエル・マテイ  パンドゥリ・トゥルグ・ジウ 1990.02.26 (21歳) 0/0
 MF
 クリスティアン・タナーセ  ステアウア・ブカレスト 1987.02.18 (24歳) 10/1
 ガブリエル・トルジェ  ディナモ・ブカレスト 1989.11.22 (23歳) 7/1
 ガブリエル・ムレシャン  CFRクルージュ 1984.02.13 (27歳) 6/0
 ダン・アレクサ  FCティミショアラ 1979.10.28 (31歳) 4/2
 L・スンマルテアン  ヴァスルイ 1980.03.13 (31歳) 4/0
 A・ボウルチェアヌ  FCティミショアラ 1985.04.24 (25歳) 2/0
 リヴィウ・アンタル  オツェルル・ガラツィ 1989.06.02 (23歳) 0/0
 ガブリエル・ジュルジュ  オツェルル・ガラツィ 1982.09.03 (28歳) 0/0
 FW
 チプリアン・マリカ  シュツットガルト(GER) 1985.10.02 (25歳) 47/16
 ヤニス・ズィク  FCティミショアラ 1983.10.23 (27歳) 9/0
 ロメオ・スルドゥ  ステアウア・ブカレスト 1984.01.12 (27歳) 4/0
 マリウス・アレクセ  ディナモ・ブカレスト 1990.02.22 (20歳) 2/0
 ジョルジェ・ツクデアン  ディナモ・ブカレスト 1991.04.30 (19歳) 0/0

6月7日 ヨーロッパ

  2012欧州選手権 予選グループD

その他の試合結果



その他の結果
 ボスニア・ヘルツェゴビナ 2-0  アルバニア
 ベラルーシ 2-0  ルクセンブルグ


現在のグループGの戦績
TEAM 得失 勝点 前節
フランス 6 4 1 1 9:2 13 1
ベラルーシ 7 3 3 1 6:2 12 2
ボスニア・H 6 3 1 2 8:7 10 5
ルーマニア 6 2 2 2 8:6 8 3
アルバニア 6 2 2 2 4:6 8 4
ルクセンブルグ 7 0 1 6 1:13 1 6


 上記結果のように、ボスニア戦快勝後に皮算用した他力ミッション第1弾は失敗の様相。同じくフランス全勝+ルクセンブルグ全敗とルーマニアのベラルーシ+アルバニア勝利をベースに計算すると、勝点17が基点になります。この時点でアルバニアが脱落。

現勝点 9月2日 9月6日 10月7日 10月11日 青枠以外
ベラルーシ 12 ボス ボス ルー 12
ボスニア 10 ベラ ベラ ルク フラ 13
ルーマニア 8 ルク フラ ベラ アル 17
アルバニア 8 フラ ルク フラ ルー 11

 ベラルーシが青枠で連勝すると勝点18、ボスニアが青枠で連勝すると勝点19。つまりはどちらかの連勝でアウト。引き分けが1試合でもあればボスニアとは勝点17で並びますが、おそらくは当該2チームの結果で1勝1敗得失点差で上回るルーマニアが2位となります。おまけの条件としてはルーマニアがフランスにも勝てば有利になりますが、それはボスニアも同じ。ルクセンブルグに取りこぼせば不利というのも同じです。

 1.全体設定としてルクセンブルグに勝利、フランスに敗北
 2.ルーマニアはベラルーシ、アルバニアに連勝
 3.ベラルーシとボスニアが青枠で2連勝しない

6月4日 ブカレスト

  稀代の愚将、ラズヴァンがようやく待ちに待った辞任

 協会がその批難の的となっていたラズヴァン代表を伸ばし伸ばしに起用し続けて、ついに前回の会議でボスニア戦で失態だったらジ・エンドという確約を結びましたが、ボスニア戦では快勝したにもかかわらずラズヴァンは辞任という結論をついに出しました。

 実のところ試合前から古巣のラピドとの接触がまことしやかに囁かれており、ラピドへの来期の新戦力は代表でも見られたいわゆるラズヴァン縁故のブラショフラインや代表へデビューさせた選手ばかりが揃っていることから周知の事実でした。これまでの代表ではスンマルテアン起用論も拒否してきたり、中盤に代表クラスではない選手で固めて破壊のためにわざとベストオーダーを組まないなどの策士でしたが、この1戦でそれまでの頑固を簡単に撤回し、スンマルテアンの起用やフローレスク非召集、リーグ屈指の守備的MFとして評判のボウルチェアヌ召集など、もはや自分の本意ではないどうでもいい代表として臨んだことからもクサイ雰囲気は漂っていました。

 要するにあれだけ辞任固辞してきた態度を改めたのは、自身の身の振りようがようやく決まったからです。ラピドとサインしてから協会に辞任の意向を伝えたようですし、どうやら就職活動メインの監督が指揮していたのがルーマニア代表であります。怒りさえ覚えてくる辞め方ですが、ひとまずハッピーエンドということで。

 後任にはラディウスラウ・ボローニやゲオルゲ・ハジが噂されています。ボローニがいいと思いますが、本命はやはり可能性は薄いながらペトレスクやサバウ、ムンテアヌあたりでしょうか。
6月3日 イタリア

  サプナルにラツィオからオファー

 ラツィオは所属のスイス代表ステファン・リヒトシュタイナーのユベントス入りが濃厚になっている中、その後釜としてFCポルト所属のルーマニア代表クリスティアン・サプナルを狙っているようです。

 元々ラツィオはサンパウロのブラジル人をターゲットにしていたようですが、ここにきてポルトで充実のシーズンを過ごしてヨーロッパリーグ制覇にも貢献した同じ右サイドバックのサプナルがファーストチョイスになった模様。サプナルの評価は加入した先シーズンから常に上昇しており、オファーは殺到していたのですが、ポルトが放出不可としていました。しかし2010年に暴力行為を起こしてリーグから5ヶ月の出場停止を受けた後は同ポジションのフシーレとの拮抗もあり、態度を緩めています。

 この移籍が実現すればここ最近は代表でそれぞれ両翼の第1人者ながら仮病の疑惑を持たれていたコンビがイタリアに誕生することになります。ラツィオは4バックに加えて3バックも併用することからも、ラドゥ同様にセンターバックもこなせるサプナルの能力は重宝されそうです。
6月3日 ルーマニア

  ガネアが現役復帰

 元ルーマニア代表の爆撃機で、4年前に失意の現役引退をしていたヴィオレル・ガネアが4部リーグのFCシュテファネシュティで現役復帰することになりました。

 ガネアはかつて国内リーグで得点王を獲得し、2000年欧州選手権に出場してからも代表では苦しいときに抜群の得点能力を見せた選手で、43試合19得点を記録しています。海外ではクラブ選択やケガの影響もあり、残念な結果となっていましたが、国内復帰したディナモでは得点ランク1位にも輝くほど復調し、代表にも復帰していました。しかしティミショアラ在席時に裁定への不満から審判に強烈な暴行を加えて現役からは退いていました。

 しかしこの度、CSアフマティとの3部リーグ昇格をかけたプレーオフに出場予定。来期の進退こそ分かってはいませんが、その性格からして長く留まることはないようにも思えます。
6月3日 ブカレスト

  2012欧州選手権 予選グループD 第6戦(ホーム)

ボスニア・ヘルツェゴビナ戦

  
とにかく快勝、完勝とはこのこと。ウィークポイントのない興奮の1戦でした。

ラピド・シュタディオン・ジュレシュティ

ルーマニア 3 20 0 ボスニア・H
10
アドリアン・ムトゥ
チプリアン・マリカ
チプリアン・マリカ
37
40
55
チプリアン・タタルシャヌ
クリスティアン・サプナル

ガブリエル・タマシュ
パウル・パップ

ラズヴァン・ラツ
ガブリエル・ムレシャン

アレクサンドル・ボウルチェアヌ
ガブリエル・トルジェ
ルチアン・スンマルテアン
(63分 クリスティアン・タナーセ)
アドリアン・ムトゥ
(83分 ロメオ・スルドゥ)

チプリアン・マリカ
(87分 マリウス・アレクセ)
GKGK
DF
DF
DFDF
DFDF
MFMF
MFMF
MFMF
MFMF
MFMF
FWFW
FWFW
FWFW
FWFW
FWFW
ケナン・ハサギッチ
メンスル・ムイジャ
アドナン・ムラバク
エミール・スパヒッチ
セナド・ルリッチ
ミラレム・ピャニッチ
エルヴァル・ラヒミッチ
ズヴィエズダン・ミシモヴィッチ
セニヤド・イブリチッチ
(64分 セミル・シュティリッチ)
ハリス・メジュニャニン
(46分 ヴェダド・イビシェヴィッチ)
エディン・ジェコ
(64分 ズラタン・ムスリモヴィッチ)
ラズヴァン・ルチェスク 監督 サフェト・スシッチ
4-2-3-1フォーメーション 4-4-2フォーメーション
警告
ガブリエル・トルジェ(1枚目)
クリスティアン・サプナル(2枚目・次節停止)

ロメオ・スルドゥ(1枚目)
68
72
77
90+2


セミル・シュティリッチ
ベンチ
コステル・パンティリモン
フローリン・ガルドシュ
ヤスミン・ラトフレヴィッチ
ガブリエル・ジュルジュ
/・ イブラヒム・シェヒッチ
ダルコ・マレティッチ
ボリス・パンジャ
ムハメド・ベシッチ

プレイバック・オブ・ザ・ゲーム

 「数字上の可能性があるから解任しない」と5試合を経て取るべきだった勝点を7も失っている状況でも恥ずかしげも無く言い張る協会が守り続けたラズヴァンのデッドラインとされるボスニアとのリベンジマッチ。そんな伸ばし伸ばしを続けていた状況だからこそ勝てばまた伸ばし伸ばしは続くだろうし、分けても続くんじゃねえか、負けてもその可能性すらある狼少年たちはもうどうでもいいとして、ピッチに立つメンツには三つの面で新展開が見られた。

 一つ目はなんといってもキヴの引退。ずっと辛い代表を心身ともに支えてきたバンディエラの離脱でどう変化が見れるか。ガルドシュが一番手の予想だが、ここはパップがスタメンに。どちらも育てたい有望若手だ。二つ目はようやくのフローレスク外しが履行。ラズヴァンしかこの最高の部隊である代表に起用しないだろう分不相応の存在で、暗に代表の不調の原因となった人物だ。全てを彼のせいにするのは酷かもしれないが、分かりやすく言えばそのポジションに相応の選手を起用していれば勝利の可能性が必然と高かったはずだと言えば良いだろう。三つ目はかつての天才スンマルテアンの復帰。ケガでキャリアを下降させたが、国内での好調で返り咲きを果たしているベテラン。たしかに代表戦ではボールキープできるこのポジションが請われて久しいが、リーグMVP級とまでは残念ながらいかないレベルに時代を逆行する起用はギャンブルの匂い。ただラズヴァンには珍しく面白い賭けではある。

 試合開始からはしばらくはローテンポで進んでいき、まだ勝負をかける素振りもないし、お互いに効果的なパスも無し。若干ルーマニアが押されているようにも見えるが、ピンチを迎えるまでもなく、特に前回に若きルパがジェコとイビシェヴィッチにチンチンにやられた右サイドは久々にサプナルが入ったため、落ち着いたプレーで突破されるようなことはなかった。

 攻撃においてはまだ8分ではスンマルテアン起用の目だった効果は無いが、これもまた前回ロポタン、フローレスクでウィークポイントであった守備的MFにムレシャン、ボウルチェアヌといったリーグ屈指の傭兵の適正を置いているため、徐々にポゼッションを得るようになっていった。まずは右のトルジェにボールを集めて、セットプレー獲得といった最近のトレンドで調子を上げていくルーマニア代表。

 12分にはゆっくりの押し上げからムレシャンが中央に上がってボールをキープし、左のムトゥへノーマークで渡りチャンス到来。しかしシュートはふかして枠外へ。CKにはニアサイドのタマシュがヘッドで合わせるもギリギリでポスト横に反れる。続く13分、ラツのオーバーラップからのクロスはグラウンダーでGKの前を横切る軌道も、詰めてきたムトゥとマリカが合わせられずに最大の決定機を逃す。しかしこの攻撃パターンがこの試合を決定付ける重要な意味を持つことになった。

 17分には相手のカウンターで中盤がルーマニアDFライン4選手を越すフワッとしたボールで明らかなオフサイド。しかしながらルーマニアDFも棒立ちの中、いっこうに笛が吹かれず、そのままミシモヴィッチはタタルシャヌとの1対1を制してゴール。ミシモヴィッチを歓喜で囲むボスニアイレブンが審判を何度も振り返っても反応は無し。また誤審の失点かと思ったここまで10秒たったころにやっと線審によるオフサイドが告げられ、失点は取り消された。誤審は明らかなシーンで、もはや居眠りしてただろレベルだっただけに、そのまま続行の悪夢とのギリギリの10秒間だった。

 24分になるとこの日には序盤から冴えたコンビプレーを見せていた右サイドからチャンスが創られる。ムレシャンからのサイドチェンジでサプナルに渡ると、トルジェのスルーパスを経たサプナルはエンドラインから中央へクロス。待ち構えるマリカから裏のムトゥへと繋がったシュートはブロックされたが、動きの中で作られたプレーとしては美しい。ムトゥ、マリカとここまでフィニッシュを逃すシーンが続くものの、そこまでのお膳立てとしては今日は何かが違う。

 29分にはついに期待のスンマルテアンがエリア外の混戦の中からパスを受けると、華麗なドリブルでDF二人を突破しながらエリア内にラッシュ。そのまま強烈なシュートがGKを越えての先制点は惜しくもバーに直撃した。CKになったことからGKが触っていたようだが、その過程が近年のルーマニアでは久しく見ていない衝撃のファンタジアであった。これが国内復活で賞賛を得ていた、ラズヴァンにここまで召集されずに眠っていた才能かと思うとギャンブル起用ってのは賭けてみる価値はありそうだ。

 ここまで順当なチャンスメイクが続くルーマニアにフィニッシュはあと一歩だったが、37分を迎えてから攻撃パターンが功を奏す。自陣からタマシュのロングボールをラツが絶妙なトラップですぐさまDFをかわすと、そのままドリブルで粘って中央へのクロスを上げる。クロスはDFの届かないギリギリでGK前へのフワッとしたコントロールされたもので、ムトゥが倒れこみボレーシュートでゴールネットを揺らした。キヴの抜けた中で残されたベテランが味を見せると共に13分に同じシーンをミスしていたムトゥには早々のリベンジになった。

 ムトゥを囲んで歓喜のルーマニアには前対戦のリベンジにかける想い、キヴという象徴の一人が抜けたことの危機から生まれた連帯感、今までの低迷のうっぷん、そして画面に映されるここまでサポート皆無とされた首都での応援がこの日は大声援で受け入れられていることの違和感とも言うべき変化がまだ先制点にもかかわらず、今日はイケルとの予想を加速させていった。ラズヴァン解任危機に発奮したというのは選手、ファン共に無いとは思う。

 それを早くも決定付けたのは3分後。今度もまたもや中盤のムレシャンからのスマートなパスを受けたラツが深く入り込むことなく直断でシンプルな鋭いクロス。これが戻るDFに届かず、前に出るGKも触れられずの絶妙なもので、スライディングのマリカがそのまま押し込んだ。チャンスを棒に振っていた二人へのラツの2アシストで完璧な一連の先制、追加点。やはりなにか一味が違う。これで前半は安全圏であり、ここまでの内容がそれを確実視させた。

 さらなる追加点も期待できる状況に楽しみな後半は、52分にボスニアの攻勢で倒れたジェコへのPKピンチかと思われたが、お咎めはなかった。エリア内のラツが超ロングボールで蹴りだすとそれが一気にトルジェとGKの1対1になり追加点のチャンス。ここではGKに弾かれ、すぐさまスローインからのボールをムトゥがヒールで流すとまたもや似た状況のトルジェの1対1が生まれた。残念ながらこれもGKに弾かれると、2004年予選最終戦で本選出場を決める追加点のチャンスを3度つぶしたフローリン・ブラトゥを思い出すような位置もそっくりのデジャブであった。しかしブラトゥは何もせずの交代出場直後のミスであり、以後の評判につながったが、代表屈指のチャンスメイカーであるトルジェには、2点のリードもあり、特に失意のイメージは無い。ただ残念ではある。

 されどもその直後にはGKハサギッチからのパントキックを左サイドのラツが後ろ向きに下がりながらダイレクトで打ち返しただけのボールに、DFがヘディングクリアを空振ると後ろでにいたマリカがボールを奪いゴールに突進。トルジェと似たようなGKとの1対1は経験の差で、また自身の得意とするループシュートで3点目を奪った。この試合でも消える時は見事な消えっぷりだが、決めるときは決めるという新たな称号を確実にした自身この日の2点目だった。

 それ以降はもう戦前のボスニア苦手意識、低迷のルーマニアにあってひっくり返された評判はかつて格下として確実に勝点を得るカモだった対ボスニアとなった。負けるどころか失点の可能性も流れからは垣間見えず、65分以降のルーマニアは意図的にペースを落としていった。そのことでボスニアに押し込まれることは多くなったが、決してピンチらしいシーンはなかった。追加点よりも無失点による完全支配にシフトされた模様。

 功労者であるスンマルテアン、ムトゥ、マリカが次々にお役御免の交代の中で、首都スタジアムでのスタンディングオーベーションが、この日を境に代表の中で何かが好転したと思わせてくれた。ここまで特筆はしていないが、地味ながら守備的MFの傭兵二人が相当効いている。少なくとも前回のロポタン、フローレスクでウィークポイントとなっていた要素は今回は見られなかった。屈強な守備専の二人を置くことでトップ下のスンマルテアン起用も安心して見ていられるし、スンマルテアンがいることで今までの底の二人の内一人はタクトを振れるギオアネやアポストルを起用しなくてはいけないという現時点では不可能なフォーメーションも取らなくても良くなった。またスンマルテアンが中央に寄ることで左のラツのオーバーラップが容易になり、コマを一人減らしたFWも逆にマークのDFが減ることで密集も減り、ウイング的にプレーできるムトゥとトルジェのおかけで前線のコマ不足も感じさせない。そしていつの間にと思わせる右サイドのサプナル、トルジェの巧みなポジションチェンジからのチャンスメイクも嬉しい産物だった。

 ロスタイムにおまけでトルジェが得意のエンドライン右深くをエリア内に切り込んだところで倒されてPKを獲得。なぜかサプナルが蹴って、止められて試合は即終了した。まぁ運がなかったというだけで、特に失望でもない。得たものが多すぎた試合に誰も気に留めてないのではないか。強引にも誰が良くなかったか選べと言われても、アラ探しするのに相当苦労するだろう試合だった。解任に傾いていたラズヴァン政権がこの勝利によって延期となっても、別にもう監督はどうでも良い。やはり私も小気味良い勝利に飢えていたということが分かった。ラズヴァンのことは完全に忘れて、ただ単に試合を楽しむというかつての感覚が思い出された。監督不在でいいから、このメンツで自由にプレーさせてあげたい。

ここ一番で結果を出す男、マリカ

その他の結果
ベラルーシ  1-1  フランス


現在のグループGの戦績
TEAM 得失 勝点 前節
フランス 6 4 1 1 9:2 13 1
ベラルーシ 6 2 3 1 4:2 9 2
ルーマニア 6 2 2 2 8:6 8 5
アルバニア 5 2 2 1 4:4 8 3
ボスニア・H 5 2 1 2 6:7 7 4
ルクセンブルグ 6 0 1 5 1:11 1 6


 なんとか恥ずかしい5位から脱出し、体裁を整えた順位へと上昇はしていますが、試合数の差でのからくりです。単純に低く見積もった形で試合数を6に合わせると下の2チームに勝点3をプラスしてアルバニア11、ボスニア10、ベラルーシ9、ルーマニア8の順番です。そりゃ前半の体たらくにボスニア勝利だけで3位ってのがおかしい。残り試合も4試合と挽回には余地が残されていませんが、意外に対戦相手を見るとポジティブに捉えることが可能な内容になっています。

現勝点 6月7日 9月2日 9月6日 10月7日 10月11日
ベラルーシ 9 ルク ボス ボス ルー
ルーマニア 8 ルク フラ ベラ アル
アルバニア 8 ボス フラ ルク フラ ルー
ボスニア 7 アル ベラ ベラ ルク フラ

 皮算用を簡易化するために可能性高いルク勝利・フラ敗戦を全適用。要するにルーマニアにとって自力ならフランス勝利も含めるが、ここは無理をせず他力に賭けるとベラルーシとアルバニアに勝利という可能なミッションです。またこれが突破の最低条件になります。アルバニアに関しては1試合少ないものの、フランス戦を2試合残しており、またルーマニア戦もあるので(ルーマニア突破条件として敗北)、脱落とみなしていいでしょう。ベラルーシはボスニア戦2連戦があり、厳しい道のりでしょう。ここで連勝しようものならルーマニア戦に負けても2位確定になります。ボスニアについては前評判は崩れた中でライバルに3連勝が命題となります。あくまで他力になりますがライバル4チームの中ではルーマニアが一歩リードとも見れる内容です。もちろんどこかがルクに分ければそこは脱落を意味し、フランスに分けか勝利すれば一歩優位になる図式です。ここまでのライバル3チームの戦いぶりを見れば安定性に欠けており、ベラがボスに2連勝やボスが3連勝なんてのは難しそう。青枠で全て勝たれたらおしまいで、一つでも分けだったらルーマニアの突破になります。もちろんルーマニアが今日のようなポテンシャルでいければの話です。とりあえずは4日後の成績でもっと分かりやすくなるので、試合の無いルーマニアは状況を見守るのみです。

 1.全体設定としてルクセンブルグに勝利、フランスに敗北
 2.ルーマニアはベラルーシ、アルバニアに連勝
 3.ベラルーシとボスニアが青枠で全勝しない



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