[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

Romanian Soccer Today 2010.9
9月12日 ルーマニア

  ラズヴァンの自分勝手な破壊。ユースをも巻き込む

 私のサイトにおいては世界的な思索と同様にユース代表はA代表への登竜門であるためさほど趣を置かないのですが、グダグダプランのA代表監督ラズヴァンのせいである問題が起きています。このユース代表をも巻き込んだ騒動はまさにこの指揮官のここまでの能力、評判を如実に表しています。

 そもそもの始まりは就任から期待されていた若手起用必須の流れを断ち切り、「28歳前後の選手こそが代表にふさわしい」と理念を掲げたことです。これによりトルジェを筆頭にフル代表相当の実力を持ちながらユースに留まることを余儀なくされた若手が続出。一方、フル代表と言えばおかしな理念によってマーラ、ダンチウレスク、マフテイなどのどう見ても落ち目で代表クラスにはほど遠い選手が鎮座し、いたずらにキャップ数を浪費。能力を見定める能力に欠けた新監督に率いられたルーマニア代表は当然のように親善試合も含めて結果は歴史上最悪のものを残すハメに。

 一方、ユース代表は優秀なサンドイ監督のもとに団結及び能力を高めてグループの首位に浮上した。そして2位ロシアとの最終2連戦直前になって、今までユースの試合が組まれていなく、若手を見定めるには十分なチャンスであったフル代表の親善試合5試合にも召集しなかった中で迎えた2012年欧州選手権予選開幕戦にいきなりトルジェらを召集。本来ならステップアップは喜ばしいことでありますが、ユース世代は上のフル代表監督が起用しない旨を明らかにしていたこと、それは親善試合でも召集しなかったことから明らかで、すでにチーム全員は来るロシアとの予選突破に向けての試合に臨んでおり、国民も当初(W杯敗退後ラズヴァン就任から)若手の起用を熱望していながら、頑固なラズヴァンにあきれと共に諦め、フル代表のふがいない結果も含めて、期待するのはユースの予選突破だった。

 しかしラズヴァンは明らかに間違っていると批判されながらの方針を取っておきながら、予選開幕において若手を投入。誰もが声を大にして「若手を起用せよ」と言っていたのを無視していながら、ここにきてユースの総決算を潰してまで、サンドイの作ったチームを「隣の芝は青く見える」と簡単に今まで頑固にしていたものを反故。要するに目標としてポイントにしていた開幕戦に向けて就任直後からやるべきだったことが、ようやく本番からスタートされる格好で気づいた模様。ここまでの十分に用意されていた時間を無駄に費やしたことがようやくわかったようです。

 若手の起用は大事であり、それを期待していた新政権。使うべきは前回の敗退後残された予選であり、親善試合だった。ここまで12試合の猶予があり、最悪でもその最後の1,2試合でも起用していれば妥協で納得の範囲であった。それを通り越したらもはや使うべきではない。準備のない若手に結果を期待するほうこそ「若手は経験がないから頼りない」として召集しなかったことへの矛盾である。そもそもどんな偉大な選手も代表デビューを控えた経験のない若手の時代があり、それを積ませるのが将来を見据えた指揮官としての仕事でもある。ラズヴァンに見えるのは自分では育てることはせず、他の人が育てたものおいしくいただくことしかないようだ。

 ラズヴァンに言わせるとペレ、プスカシュ、ベッケンバウアー、ガリンシャ、プラティニ、ジーコ、チャールトン、エウゼビオ、ジュニオール、ケンペス、ミュラー、バンクス、バレージ、マラドーナ、マルディーニ、ストイチコフ、カレッカ、ロマーリオ、バッジオ、リネカー、ブライトナー、ジダン、ハジ、メッシ、ラーション、ブローリン、ダーリン、ガスコイン、オーウェン、トッティ、ネスタ、ポペスク、ムトゥ、ネドヴェド、オコチャ、キング・カズ(途中から順不同+疲れた)などの偉大な選手たちも28歳まで代表デビューを待たなくてはいけなかったということだ。多くの指揮者がその活躍を信じてピッチに送り出したことが栄光の始まりだったことも知らずに。極論ですが、それほどバカげていた理念だったということです。「若手は経験がないから28歳前後が代表相当」。できれば最後まで貫いて強烈な印象を残して去って欲しかったです。ここからのスタートでもう今予選もダメになったことですし。何度も言うようですが、時間はあったのです。そして多くの人はそうしろと言ってきたのです。頑固な考えを柔軟にしたことは褒めたいですが、もはや遅すぎた。公言はしませんが、ここまできたらサンドイ監督も総決算として最後まで見守りたいでしょう。

 長くなりましたが、今回の問題は無事ロシアとの対戦も潜り抜けイングランドとのプレーオフが迫った状況で、トルジェ等のユース世代はプレーオフにつぎ込むか、または後手後手のフル代表のラストチャンスであるフランス戦に賭けるかということが起こっています。サンドイが育てたチームの栄光の手助けをするか、ラズヴァンが破壊し続けたチームの尻拭いをさせるかの2択ははっきりしています。たとえフランス戦を切り抜けたとしてもラズヴァンが率いる限り、一時凌ぎでしかないことは明白なのですから。

 私の文章は怒りにまかせた部分が多いため、言いたいことが分かりづらいですが、福岡在住のルーマニアファンであるコンツァ氏がまとめた以下の文章こそ至極納得のいくものであり、おおいに賛同できるものでしたので抜粋しておきます。

 ユースのエミール・サンドイ監督の方針は常に一貫しています。それは、「いつでも、我がチームから選手をA代表に連れて行ってほしい。ここ(U21代表)は長く留まる場ではない。もちろん、トルジェとラドゥツが欲しいのは当然。でも、優先権は常にA代表にある。ラズヴァン監督が彼らを 必要と言えば、更に、ビクファルヴィとガマンも必要と言うならば、喜んで送り出すのがユース代表監督の務め。既に、私が指導したチームから、パンティリモ ン、タタルシャヌ、デアク、タナーセ、B・スタンク、そして、トルジェがA代表に行った。彼らがA代表でプレーする姿が、何よりも誇らしいものだ」とコメント。

 問題は、その"長く留まる場ではない"ところに、"長く留まらせた"ヤツがいるということです。ユース代表での活躍が、その後のクラブチームでの出 世に繋がったことは既に紹介しました。これらの選手達は、そのクラブでの活躍を、今度はユース代表に還元し、予選で快進撃を見せました。それでも、無視したヤツがいたのです。

 結果論ですが、早くから若手を登用したら、当然、ユース代表はその都度メンバーと戦術の変更に迫られ、もしかしたらグループ首位通過はなかったかも しれません。でも、別に良いじゃないですか。今のA代表に19~22才の選手達が5,6人もいたら、将来のための犠牲として、近年の結果も不問になってた でしょう。

 要は、「その国のA代表とは、年齢と経験が充実している選手達が集まるべき!」と吹いたヤツが、1年半も結果が出ない挙句に、ここに来て、急に路線変更をしたことが、今回の議論を生み出したのです。


 ピツルカから代表低迷期を受け継いだ時にはラズヴァンに対して建て直しに対して寛容だった覚えがあります。それはやはり時間がかかるものであるし、若手の登用さえしてくれればたとえ結果が伴わなくても、そして必然のようにユース代表は弱くなるけれども、将来に向けて必要なことであるし代表を見守るという点では温かく立て直していく過程を楽しんでいこうとも思えるものです。栄光のかげりは悲しいことでしたが、もはやしょうがないものとして多くの人は未来に向けての我慢を伴う大改造は覚悟していたでしょう。現在のところそれが裏切られているからこそ論争が起り、すでに見限っているのです。新監督に期待した仕事はこんなものではなかったと。
9月7日 ミンスク

  2012欧州選手権 予選グループD 第2戦

ベラルーシ戦

  
2戦目にして早くも予選突破が黄色信号。実力不足のラズヴァンではしょうがなし。

ディナモ・スタジアム

ベラルーシ 0 00 0 ルーマニア
00
ユーリ・ゼヴノフ
イゴール・シトフ
シャルヘイ・アメリヤチュク
アリアャクサンドル・マルティノヴィッチ
アリアクサンドル・ユレヴィッチ
ヴヤチェスラフ・フレブ
シャルヘイ・カルニレンカ
(76分 ヴィタリ・ロディオノフ)
アリアクサンドル・クルチー
アリアクサンドル・フレブ
(73分 アントン・プシラ)
ヴィタリ・クツゾフ
(87分 セルゲイ・クリヴェツ)
シャルヘイ・キスリアク
GKGK
DFDF
DFDF
DFDF
MFMF
MFMF
MFMF
MFMF
MFMF
FWFW
FWFW
FWFW
FWFW
FWFW
コステル・パンティリモン
ヴァシレ・マフテイ

ガブリエル・タマシュ
クリスティアン・キヴ

ラズヴァン・ラツ
ジョルジェ・フローレスク
ミレル・ラドイ
ガブリエル・トルジェ
(46分 ラズヴァン・コチシュ)
チプリアン・デアク
(83分 チプリアン・マリカ)
マリウス・ビラシュコ
ボグダン・スタンク
(73分 ダニエル・ニクラエ)
ベルント・ストランゲ 監督 ラズヴァン・ルチェスク
4-4-2フォーメーション 4-4-2フォーメーション
警告
72
88
91
チプリアン・デアク(1枚目)
ミレル・ラドイ(1枚目)
ヴァシレ・マフテイ(1枚目)
ベンチ
シャルヘイ・ヴェラムコ
ドミトリ・モロシュ
マクシム・バルダチョフ
セルゲイ・ソスノフスキ
/・ チプリアン・タタルシャヌ
ミハイツァ・ネシュ
マリウス・コンスタンティン
ガブリエル・ムレシャン

プレイバック・オブ・ザ・ゲーム

 前節で以前であったら「まさか!」の、ここまでのラズヴァンのやり方を見てきている人にとっては「まぁ、覚悟はしていたレベル」のアルバニア戦ドローで予選突破に向けて本来のライバルであるフランス、ボスニア戦前に落とすことのできないベラルーシ戦。ここはもうラズヴァンが撒き散らしてきた幾多の代表を取り巻く環境を度外視して、選手としての栄光の本大会を目指してピッチ上だけで意地を見せたいところ。

 しかしベラルーシも前節ではフランス相手に勝利を収めている侮れない相手であり、以前までの稼ぎどころとしての位置づけは前回の格下とされていたリトアニアやオーストリアの後塵を拝した5位というルーマニアのポジションからはもう挑むという表現こそが妥当なのかもしれない。

 ルーマニアはベラルーシが得意とするカウンターアタックに対して、ビラシュコをターゲットマンとしてデアクとスタンクの飛び出しを狙うスタイルで序盤は崩していく。これが効を奏して試合をコントロールしていくなかで決定的チャンスは2度訪れた。25分、この日も積極的なビルドアップを図っていたデアクからのクロスはスタンクが完璧に捉えたが、ゼブノフのナイスセーブに阻まれる。33分にはトルジェがシュートを放つもまたもやゼブノフが立ちはだかった。一方のベラルーシはタマシュがコルニレンコに左サイドを鮮やかに抜かれ、角度が厳しいながらパンティリモンと1対1の絶好機にシュートはサイドネットへ。

 目に見るチャンスこそ少なかったが、この日もラズヴァンだけが公然とスタメンで起用し続けるフローレスクが普段より攻撃的に構えて悪くないプレーを披露し、デアクとトルジェも両翼で頻繁にサイドチェンジしてベラルーシの網をほつれさせ、加わったスタンクとのパスワークも得点を感じさせる見ごたえのあるものだった。

 後半はせっかく期待できる流れの中で活躍を見せていたルーマニアの希望であるトルジェが、いつもの実力経験不足の悪評高いラズヴァンの奇策(本人はまともだと思っている)でトルジェに代わりコチシュが出場。これでルーマニアの翼は1つもがれて攻撃の可能性は減少。一方のベラルーシはフレブ中心に見事なパスワークでルーマニア陣内を押し気味に進めていく。助かったのはこの日のデフィフェンスは堅固を誇っており、ペナルティエリアには進入させない。ただ相手の攻撃の中で下がりながらボールを奪取したラツがパンティリモンへ流したバックパスがあまりにも弱く、チャンスを狙っていたフレブの突進にパンティリモン焦って蹴りだしたのは危なかった。

 その後の攻撃的チャンスといえば57分のスタンクの絶妙なヘディングがオフサイドとなり、71分にはラツがベラルーシ陣内へと猛然と突進したチャンスにデアクの反応が遅れてパスが繋がらなかったシーン、73分以降はデアクとスタンクという若手を下げて、従来どおりのマリカ、ニクラエとマイナーチェンジ。マリカこそ投入されてすぐに84、87分と2度の個人技でのシュートがあったが、コースが甘かったためGKにキャッチされている。ちなみにラズヴァンがトルジェを下げてまで投入したコチシュは見るべきプレーはなく、時間を浪費したというのが妥当な評価であった。またもやラズヴァンの奇策が発揮されたようです。

キヴとゆかいな仲間たちになりつつあるルーマニア

その他の結果
 アルバニア 1-0  ルクセンブルグ
 ボスニア・ヘルツェゴビナ 0-2  フランス


現在のグループGの戦績
TEAM 得失 勝点 昇降
アルバニア 2 1 1 0 2:1 4 4
ベラルーシ 2 1 1 0 1:0 4 2
ボスニア・H 2 1 0 1 3:2 3 1
フランス 2 1 0 1 2:1 3 5
ルーマニア 2 0 2 0 1:1 2 4
ルクセンブルグ 2 0 0 2 0:4 0 6

 協会も思っているだろう。そもそもラズヴァンに任せたことが失敗だった、また早くに解任していればと。しかしもはや利権を手にした後ではその利権を磐石とするには批判ながらもラズヴァンを囲って、代表の未来を本気で考えている黄金世代を始めとする世論の内部進入を防ぐことだけである。任期の内はしがみついて利権の限りを尽くして、搾り取れるだけ絞ったものを抱えて余生を過ごすつもりでしょうが、亡命するしかしょうがないような国民総動員の罵声や蔑みの視線に耐える覚悟もそろそろしたほうがいいです。コロンビアなら殺されてます。

9月3日 ピアトラ-ネアムツ

  2012欧州選手権 予選グループD 第1戦

アルバニア戦

  
ラズヴァンだけが把握できていない相変わらず予想通りのつまずき。

チェアラウル・スタディオン
ルーマニア 1 00 1 アルバニア
11
ボグダン・スタンク 80
87

ジェルジ・ムザカ
ボグダン・ロボンツ
コスミン・コントラ
(56分 ガブリエル・ムレシャン)
ガブリエル・タマシュ
ミレル・ラドイ
ラズヴァン・ラツ
ジョルジェ・フローレスク
ラズヴァン・コチシュ
(77分 オヴィディウ・ヘレア)
ガブリエル・トルジェ
チプリアン・デアク
ダニエル・ニクラエ
(64分 ボグダン・スタンク)
チプリアン・マリカ
GKGK
DFDF
DFDF
DFDF
MFMF
MFMF
MFMF
MFMF
FWFW
FWFW
FWFW
FWFW
FW
FW
アリヤン・ベチャイ
アルメンド・ダルク
ロリク・カナ
デバティク・ツリ
クリスティ・ヴァンジェリ
エルヴィン・ブルク
アンディ・リラ
クロディアン・ドゥーロ
(81分 ジェルジ・ムザカ)
エルヴィン・スケラ
(79分 ギルマン・リカ)
アンシ・アゴリ
エリオン・ボグダニ
(57分 ハムディ・サリヒ)
ラズヴァン・ルチェスク 監督 ヨシプ・クゼ
4-3-3フォーメーション 4-2-3-1フォーメーション
警告
ラズヴァン・ラツ(1枚目)

オヴィディウ・ヘレア(1枚目)
40
50
87

クリスティ・ヴァンジェリ
ベンチ
コステル・パンティリモン
ミハイツァ・ネシュ
ヴァシレ・マフテイ
マリウス・ビラシュコ
イスリ・ヒディ
エンドリット・ヴラピ
アドミル・テリ
ヤーミル・ヒュカ

プレイバック・オブ・ザ・ゲーム

 就任してからすでにここまで前回W杯予選の敗退決定後の後半戦とテストマッチを納得するようなまともな策をとらずに、誰が見ても当然のように批判の渦中にあるラズヴァンは就任時はまだ先のようであったこの掲げた目標である予選をついに現時点で何の希望も見出せないまま迎えた。もはやその試合で結果を出せなかったら即解任が至極当然の状況ながら、それをここまで連続して出しておきながら、協会の利権の温床の恩恵を受けて下降線を邁進するラズヴァンをはた目にルーマニア代表は今までとはまさに違う突破に向けての「本番」として断固たる勝利への決意を持ってこの試合に臨んだ。

 試合が開始されるとアルバニアにとってみれば一息つくようなスローペースではなく、開始早々15秒にラツのクロスからマリカに渡り、6メートルの至近距離からシュート。これはポストに直撃したものの、いきなりのフルスロットルで3年前の2008年予選での同対戦で6対1の大勝を思い出させるには十分な出だしを見せるルーマニア。

 さらにルーマニアの攻勢は続き、15分の間は終始アルバニア陣内でプレー。しかし一つのチャンスも生かせずに先制点が生まれない。この日が予定外の代表デビューとなったトルジェは同じ右サイドのコントラの押し上げにより、深く前線でのプレーを見せて十分なパフォーマンスを披露したが、中盤の中央でプレーしているコチシュやフローレスクはアルバニアの奮闘に攻撃の目を見出せず、FWにとってはもはや以前のような簡単に得点を決めるシチュエーションは格下といえどこの2人から作り出すことは難しいと判断せざるをえない。

 トルジェと共に少ないながらルーマニアの希望とされる左サイドのデアクは積極的な上下動を繰り返し、ルーマニアの攻撃陣を鼓舞し続ける。その中でデアクのシュートは決定的なものがあったが、相手キーパーのナイスセーブで弾かれ、またコントラからデアクのパスがペナルティエリア内でのアルバニアのヴァンジェリの明らかなハンドであるも、見逃されると同時にそのジャッジに抵抗したラツがイエローをくらって前半は0-0のまま終了。

 後半もそれなりのチャンスを作るが実を結ばない。ラツのマリカへのクロスは決定的とも思われたが、惜しくもオフサイドの判定。そしてやはり中盤底の二人からは効率的なパスが回ってこないニクラエはいたずらに消えている時間帯が続き、もはや攻守に渡って無尽蔵の活性を見せているデアク、それには及ばないまでも代表デビューながらデアクと共に活路を見出すトルジェに賭けるしかない。しかしこの攻撃の可能性を掌っている両翼のコンビは早々に解体されることになった。

 ここまでアルバニア相手に攻勢に出れない原因の多くを占めていたコチシュ、フローレスクのコンビを代えることせずに新たな中盤のフィルターとしてムレシャンを投入。ムレシャンの投入こそ利にかなったものではあるが、退く選手は右サイドのコントラ。今までの試合で意味も無く右サイドをマフテイに固執してきた経緯があり、この試合ではダナナエ、サプナルの負傷によりしょうがなくコントラの召集及びスタメンという切羽詰った状況で、この状況でこそマフテイの投入は仕方なしとも見える。少なくとも代えるのであれば、コチシュorフローレスク→ムレシャン(推奨)、コントラ→マフテイorコチシュ(仕方がないなら)で変わらず後半もデアク+トルジェに活路を見出すしか残されていないはず。しかし策士ラズヴァンの右サイドの欠員を補う策は攻撃の可能性が残されていた50%のトルジェを右サイドバックにコンバートするもの。これで後半早々から指揮官の指示で攻撃の片翼がもげたルーマニア。早くもアルバニア相手に引き分け布陣とも取れる混沌では得点の匂いは生まれない。

 ようやく後半35分にデアクの左からのコーナーを混戦の中でムレシャンがヘッドで前に送ったボールは厳しくも相手DFとGKの前。しかしスタンクが胸の位置の高いボールを待たずにそのまま空手のようなボレーで先制した。一気に歓喜にわくホームのルーマニアスタンド。この一発で全ての疑問をなかったことにするようなラズヴァンの満足そうな笑みが画面に映し出される。

 しかしその場しのぎの問題解決は神が許さず、裁きの鉄槌が落とされたのはその7分後。ルーマニア陣内左ハーフからのアルバニアFKは大きくペナルティエリアの密集地帯へと送られ、ルーマニアDFの前にポジションを取っていたムザカのバックヘッド気味のシュートはロボンツの届かない右上隅へと吸い込まれていった。

 得点直後の、終了直前の、セットプレーでのという最近のルーマニアの失点パターンが3つ合わさった形にはもはや必然のシナリオだったと思わせる失望。さらには失点後の集中力の欠乏はアルバニア相手にサリフのドリブル突破を許し、ロボンツの横っ飛びに助けられた凋落も付け加えておく。ラズヴァン解任を求むコールとムトゥの復帰を望むコールがこだましたスタンドの世論は誰が見ても明らかなまま、ルーマニアの目標であった予選スタートからの飛躍はラズヴァン以外の多くの人が予想したとおりの結果に収まった。

英雄になり損ねたスタンク

その他の結果
 ルクセンブルグ 0-3  ボスニア・ヘルツェゴビナ
 フランス 0-1  ベラルーシ


現在のグループGの戦績
TEAM 得失 勝点 昇降
ボスニア・H 1 1 0 0 3:0 3
ベラルーシ 1 1 0 0 1:0 3
ルーマニア 1 0 1 0 1:1 1
アルバニア 1 0 1 0 1:1 1
フランス 1 0 0 1 0:1 0
ルクセンブルグ 1 0 0 1 0:3 0

 これでラズヴァンになってからルーマニアサッカー史上でリトアニア、ウクライナ、マケドニアに負けたことにまた勲章が加わりました。アルバニア相手に勝ち点を落としたのは44年振りみたいです。そういえば8月にトルコに負けたのも久々だった気が。中堅以下の国にとっては今のルーマニアは格好の稼ぎどころになってますね。もはやルクセンブルグもこれに加わるのか?



バックナンバー
2010 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 / / / / /
2009 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2008 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2007 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2006 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2005 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2004 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2003 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2002 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2001 / / / / / 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

戻る