ルーマニア文化
文学及び哲学:
1848年にパリ革命に参加した留学生が帰国し、ルーマニアにも革命の気運が起こります。モルドヴァやワラキア、そしてトランシルバニアでもルーマニアの知識階級や農民たちが支配者に反旗を翻し立ちあがりました。この革命は失敗に終わりますが、革命に参加した哲学者や詩人たちによってルーマニアに近代文学の種が植えられました。
それまでルーマニア語はキリル文字(ロシア語などで使われている文字)で書かれていました。この時代にルーマニア語はエリアーデ・ラトゥレスクらの努力によってラテン文字で書かれるようになりました。
後期ロマン派を代表する人物の一人であるミハイ・エミネスクは19世紀後半に活躍した詩人で、その詩は今でもルーマニア詩の最高峰にあると言われてます。彼の作品はほぼ全世界で翻訳されています。また、詩人で随筆家のトリスタン・ツァラは、彼を世界のアヴァン・ギャルド作家の第一人者に押し上げたダダ運動の創始者であります。
そのほかでは、多くの歴史小説、農民小説を書き、散文学の最高峰と言われるミハイル・ザドヴァヌ。劇作家でフランス芸術院会員のエウジェン・イヨネスコ。哲学者でもっとも尊敬される宗教史学者ミルチャ・エリアデ。世界中に名前を知られる著名人の一角をなしている哲学者エミル・チオラン。哲学者であり詩人でもあるルチアン・ブラガ達がいます。
音楽:
もっとも有名なルーマニアの音楽家は、世界的なヴァイオリン奏者であり、作曲家としても著名なゲオルゲ・エネスクです。彼は1881年に生まれ、ルーマニア民謡の伝統をシンフォニーで表わすことに成功した。彼の最も有名な作品はルーマニアン・ラプソディであろう。同様に著名なイェフディ・メヒヌンがエネスクの弟子であり、親友だったことは余り知られていません。
もう一人のルーマニア人作曲家チプリアン・ホルムベスクは、特にバラードの作曲で国際的な支持を得て、日本でもよく知られています。
演奏家については、ディヌ・リパッティはピアノの神様と称されるとおり先駆者たちの中でも特に有名である。今日ではゲオルゲ・ザンフィルがパンフルート奏者として最も有名です。
指揮者としては、セルジオ・チェリビダケが最も代表的なルーマニア人音楽家の一人として挙げられます。
美術:
ルーマニアの美術で有名なものはガラスのイコンです。イコンは東方正教会で礼拝用にキリストや聖母などを木版などに書いたもので、ガラスのイコンは板ガラスのウラから彩色したルーマニア独自のイコンです。
ガラスのイコンの制作は17世紀頃から始まりました。ロシアなどのイコンと違い、キリストや聖母だけでなく旧約聖書の物語なども題材として描かれてる、素朴で美しい美術品です。しかし、その民芸的な美術品としての価値が認められたのは遅く、 古い物は多く残っていません。とはいえ、各地の博物館には美しいガラスのイコンが数多く展示されています。
建築:
1995年、ルーマニアはチェルナボダ橋の完成100周年を祝いました。セルナボダ橋は100年前にヨーロッパで作られた橋の中では最も大きい橋である。橋の設計・建設を行ったアンゲル・サリニーは土木工学のマニュアルを何冊か書いていますが、それらは現在でも参考資料として利用されています。
彫刻:
現代抽象彫塑の創始者コンスタンチン・ブランクーシはトゥルグ・ジウ近郊のホピツァで生まれました。彼の作品は世界各地の美術館やコレクターの間の誇りとなっていますが、人間や生物、オブジェの形を表象する新たな現代的様式を創り出しました。ラドゥ・ヴァリアによって書かれたブランクーシの人生と作品に関する研究は日本語に翻訳され、1994年リブロポートから出版されており、書店で購入できます。また、彼の作品の一つは枚方美術館にも所蔵されています。
科学:
完全な自動推進式飛行機の最初のフライトは1903年のことでしたが、このプロトタイプを設計したのがルーマニア人技術者のトライアン・ヴヤである。さらにこの分野に貢献した人物としてアウレル・ブライコが挙げられます。プロペラ推進にとって代わった近代的ジェットエンジンは、ルーマニア人科学者ヘンリ・コアンダにより発明され開発されました。彼は、彼の名前をとったコアンダ効果の発見者でもあります
ルーマニア人科学者たちは他の分野でも偉大な功績を残しています。数学では最も著名なルーマニア人科学者としてオクタブ・オニチェスコとグレゴリ・モイシルが挙げられます。また、興味深いこととして、サターンVロケットの開発者ヴェルナーレ・フォン・ブラウンに数学を教授したヘルマン・オベルトの名を挙げることができるでしょう。さらに、3段ロケットのアイデアは数世紀前にさかのぼり、ドイツ系トランシルバニア人学者コンラッド・ハースによるものであります。経済学の分野では、ヴィルジル・マドジアロとミハイル・マノイレスコ、化学・生物学ではノーベル賞を受賞したゲオルゲ・パラデが最も著名であります。
民衆の歌と踊り:
ルーマニアの人々は歌と踊りが好きです。日本の民謡などと同じように古い歌や踊りもまだたくさん残っています。なかでも有名なのがドイナやホーラです。ホーラは何人もの男女が輪になって踊る舞踊で、結婚式などで踊られます。若い男女が着飾って踊る村の広場はお見合いの場所でもありました。ドイナは即興のエレジーで、ルーマニア人の心の歌といわれます。
若い人はディスコが好きです。日本のカラオケみたいに、ちょっと大きな町にはディスコが何軒もあるそうです。
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